ラジオフランス(Orchestre National de France)で首席奏者としてクラリネットを吹いておられるパトリック・メッシーナ氏のレッスンを受けて来ました。
レッスンのことをブログに書こうと思ったのは、昔フランスに留学するかどうか迷っていたときに、色んな人のブログを読んでいたんですが『もっと留学したらどんな経験が出来るのか知りたい』と思うことが本当に多かったためです。
また、世界にはこんなにも素晴らしいクラリネット奏者がいて、もっと音楽を愛していきたいと感じることができたので、こういう体験は絶対シェアした方がいいので、今回感じたことを出来る限り書き記すことにしました。
パトリック・メッシーナ氏のプロフィール
パトリック・メッシーナはフランス、ニース生まれのクラリネット奏者。ニューヨークのイースト&ウェスト国際アーティスト・コンテス、ヒューストン・イマ・ホッグ・ナショナル・アーティスト・コンクールなど数々のコンクールで最優秀賞に輝き、1996年からはレヴァイン率いるメトロポリタン歌劇場管弦楽団に定期的に出演。2003年からはフランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者を務め、名門オケの中核としても活躍しています。2012年9月には来日公演も行い、日本でも高い評価を受けたメッシーナ。今後の再来日、そして更なる活躍に期待必至のアーティストです。
引用:http://tower.jp/article/feature_item/2012/11/05/1101
レッスンを受けようと思ったきっかけ
わたしがパリに住んでいるのは夫の転勤によるもので、2017年の4月からパリに住んでいます。
ただ、最初は音楽院へ行くことも考えていなければ、当初はフランス語も英語も本当に出来なくて、こんな状態でレッスンに行っても…というか誰に習いに行ったらいいんだろう…という状態でした。そのため、プライペートレッスンに行くこともありませんでした。
でも、色んなことがきっかけになって、自分らしい音楽との歩み方がクリアになってきたことや、語学力が未熟であっても学べることはあると確信して、レッスンをお願いしました。
パトリック・メッシーナ氏のことはエコール・ノルマル音楽院で教えておられる先生の一覧から知り、FaceBookで友達申請をして、彼の出演するコンサートを聴きに行った際に『レッスンを受けたいです』ということを伝えました。
それが約1ヶ月前くらい。そんなこんなでFaceBookメッセンジャーをやりとりして、レッスンを受ける日が決まりました。
彼はFaceBookのメッセンジャーに対して丁寧に対応してくれましたが、それはわたしがパリに住んでいたからなのか、たまたまラッキーだったのかもしれません。
ちなみに他の機会にジャズを演奏している方にレッスンをお願いしようと思いメッセージを送ってみたことがあるんですが、返ってこなかった方もいました。正直あまり返事を期待しない方がいいのかも..?と思います。
レッスンでの会話はフランス語と英語
ちなみにメッセージは基本的にフランス語でやりとりしていますが、レッスンは英語とフランス語を混ぜながら行われました。
わたしはまだまだどちらもそんなに流暢に喋れないので、基本的にはあいづちを打っています。
全然意味のわからないことを言われたら聞き返しますが、彼のレッスンはとても分かりやすかったので、そういう機会も少なかったです。
日本語でレッスンを受ける場合でも同じだと思うんですが、同じことを言ってると言っても人によって言葉の選び方が違うし、より分かりやすいように歌ったり、楽譜に書き込みをしたり、自分で吹いてみたりと、言いたいことをより分かりやすくするための+α要素の使い方も違いますよね。
先月ジャズクラリネット奏者の方にレッスンを受けたときに思ったんですが、パトリック・メッシーナ氏はかなり簡単な言葉で的確に内容を伝えてくれる素晴らしい指導者でもあると感じました。
そんな吹き方があるのか!
そんな解釈をしてるのね
などなど、なるほど〜〜と共感することばかり。
え、それどういうこと???
って思うことはありませんでした。
パトリックのレッスンは本当に分かりやすいので、語学力に自信がない人でも心配せずに受けて大丈夫だと思います。
レッスン場所は?
レッスン場所はラジオフランス。家からバスで20分ほど行った場所にあり、とても便利です。
これはロビーの写真。
ちょうど数日前にここにはコンサートを聴きに来ていたので、場所もすぐ分かって良かった。
昨夜はラジオフランスの合唱団のコンサートに行ってきました☺️✨合唱→パーカッションソロ→合唱→ヴィブラフォン+電子音→バーンスタインのチチェスター詩篇と、なかなか興味深いプログラムでした。 pic.twitter.com/OqafeKQ3wd
— 吉田佐和子 (@sawaclarinet) 2018年1月15日
10分前に到着して、緊張しながら彼が現れるのを待っていました。
レッスン前に感じる緊張に関して思ったこと
レッスン前って本当に緊張しますよね。
ちなみに前日の夜も緊張して眠れなかったです(苦笑)
「あれ?わたし緊張してる?笑」って思いながらベッドの中で1時間ほど眠れない時間を過ごしてました。
ただ、緊張は頑張りたいって思ってるからこそ起こる現象だし、緊張するのは日常茶飯事なので緊張したから焦ることもありません。
どんな演奏になるかは分からないのだから、演奏する前から「失敗するかも」「ちゃんと吹けるかどうか不安で..」と思う人もいるかもしれませんが、それって成功する確率が低いと決めつけちゃってるから起こる思考ですよね。
成功するかどうか分からないって言うけど、どれくらいの確率で失敗すると思う?
5:5の確率で失敗するかもって思ってるかもしれないけど、確実にそうとは言い切れないよね?6:4の確率で「成功」するかもよ?
とか思うと少し心が楽になったりするんですよね。
たった1割可能性が変わるだけで心が安定するなら、そう考えてた方がいいです。
…まぁ今回緊張していたのは初めてレッスンをみていただくということ、初めての場所であること、英語とフランス語を使ってレッスンを受けるのが初めて..という、初めてのことだらけだったということが一番の理由です。
練習不足で緊張する人もいると思いますが、曲の練習に関しては、レッスン日が決まってから腰を痛めつつも限られた時間はちゃんと使って練習に取り組むことが出来ていたので不安になることはありませんでした。
レッスンで見てもらった曲は?
レッスンにはメサジェの『SOLO DE CONCOURS』を持っていきました。
メサジェはフランスの作曲家。フランス人のパトリック・メッシーナ氏がこの曲をどう捉えているのかを知りたかったこと、この曲は日本でも何度も演奏したことがあり、これからも演奏する機会が多い曲であることが大きな理由です。
また、この曲はわたしが高校生のときに初めて聴いたクラリネットのCDに入っていた曲でもあり、思い入れが深い曲だったこともあります。
彼には『コンクール受けるの?』と言われましたが、、苦笑
ちなみに、コンクールは、ぜひパリに住んでる間に何か受けたいと思っています。
レッスンは基礎練習からスタート
曲の練習に入る前に、指の運動も兼ねて基礎練習をしよう、と言われて10分ほど取り組みました。
その際に、普段家でどんな基礎練習をしてる?と聞かれました。
そこで半音階を中心としたいくつかの練習したり、レジスターキーを使ったロングトーンをするなかで呼吸の仕方、舌の使い方(舌先、舌の根元)と下腹部の支えのバランスをしっかりとってタンギングする方法などを教えていただきました。
また、これらの練習は常にメトロノームをつけてテンポに忠実に練習することがとても重要だと教えてくれました。
基礎練習にオススメされた本
おすすめの教本として、JEAN-JEAN、VADE MECOM、KROEPSCH 416STUDIESをやるといいよ、とも。
ジャンジャンの『クラリネットのための段階的な旋律練習曲』は第1巻〜3巻まであります。
VADE MECOMはこれですね。音大時代にやったけど最近やれてなかったので開いてみます。
クレプシュの『416の漸新的練習曲』は第1巻〜3巻まであります。
わたしはやったことがなかったので取り組んでみようと思います。
実際買ってみたので内容をまとめてみました。
レッスンで学んだこと
今回わたしがレッスンで学んだことを端的に書き出すとこんな内容になります。
・独特のフレーズの解釈
・スタッカートをする際の舌の速さ、ブレスの支えのバランス
・スタッカートをするときに舌をリラックスさせる方法
・連符の捉え方、連符が続いたときの最後の音を美しく演奏するための方法
どの解説も本当に分かりやすく、音楽がより自然な方向に向かっていきました。
特にフレーズの解釈はフランス人ならではなのかもしれませんが、私の引き出しには全くなかった部分もあったので興味深かったです。
彼が曲に取り組む際に気をつけていること
最後に、彼が曲に取り組む際に気をつけていることについて質問してみました。
この曲を例にしていうと、彼は次のようなことをするそうです。
・曲の分析を行う(ハーモニーや旋律のキャラクターを考える)
・ピアノパートを弾いたりして、色んな角度から曲を捉える
・上記のことを繰り返して楽譜を頭に入れる(ピアノもクラリネットも)
曲への正しい取り組み方ってこれが普通..だと今なら思うんですが、音大時代はあまり出来てなかったなぁと感じています。
ただ演奏していたというか…この曲が生まれた時代、作曲者のことなども今は知りたいと思うんですが、当時は『吹ければいいんだ』なんて低レベルなことを思っていたのです。
それじゃあ深い意味で音楽を愉しむことが出来ないですよね、きっと。
まとめ
彼は本当に分かりやすい解説をしてくれ、終始和やかで、自らも進んで楽器を吹いてくれて、なんかもう完璧すぎました。。
彼に習っているお弟子さんたちは、きっとあんな先生のような人間になりたい、あの人のように真摯に音楽に向き合いたいと思うのではないでしょうか。
わたしがこう呟いたのは、何より彼の音楽に対する真摯な姿勢にとても感動したからです。
ラジオフランスでパトリック・メッシーナ氏のレッスンを受けて来ました。濃厚な1.5時間だった..😭😭ちょっとこれは世界観が変わるよ..ブログに書きます💪 pic.twitter.com/0a1Xb5xguA
— 吉田佐和子 (@sawaclarinet) 2018年1月21日
今日は、クラリネットという楽器、メサジェの曲(楽譜)を通じて、音楽と向き合える喜び、音楽を学べる喜びを感じられたように思いました。
日本の先生って、色んな人がいるけど、わたしが楽器を始めたきっかけである吹奏楽部では、講師の先生に怒られることもたくさんありました。
先生の言っていることは分かるけど、具体性がなかったり、共感出来なかったり…
苦しかった思い出がたくさんあります。
よく吹奏楽部でむちゃくちゃ楽器を練習したのに、引退後に絶対吹かないという人が多いのは、本質的な学びの喜びを感じることがなかったからではないでしょうか?
多分、先生自身が音楽を学ぶ本当の喜びを知らないのかもしれません。
今日は、こんなにも素晴らしい先生がいて、こんなにも音楽の可能性を、何より自分自身の可能性を感じられる時間が過ごせたことが、とても嬉しかったです。
世界は広いし、言語だって、少し勉強すれば何とかなります。
もし留学を考えていたり、短期休暇を利用して海外に行ける機会がある人はどんどん海外の先生にレッスンを受けてみてほしいです。
おまけ
ジャズをやっていることが、カデンツを吹いたときにバレました。
「な、なんでわかったんですか?!」
と驚きながら聞くと、アンブシュアが基本的にリラックスしてるから、と言われました。
確かに、自分で曲を作るようになってからアンブシュア変えたんですよね。。
自分の出したい音が出るアンブシュアを自然と選んでた、っていうのもあるんですが…
彼はアンブシュアとマウスピースについてもアドバイスをくれたので、明日以降の練習でまた試していこうと思います。
ちなみに、彼はジャズもとても愛しているそうで、フランスのオススメ奏者を教えてもらいました。
フランスのベテランサックス奏者・André Villéger(Cla/Sax)
サックス吹いてる音源しか見つけられなかったけど、貼り付けておきますね^^
また、Philippe Portejoieも紹介してもらったのですが、基本的にクラシックだけどインプロもされる方なのかな..
もしよかったらコンタクトをとってレッスンを受けてみたら?と教えていただきました。
こうしてわたしが全然知らない人も『合うんじゃない?』と紹介していただけるのは嬉しいですね。
今月末からしばらく日本に滞在するので、また帰国した際は彼のところへもう一度レッスンに行きたいと思います。(次はモーツァルトになりそうです)
むちゃくちゃ長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!