『音楽をもっと身近に』という言葉を、わたし自身も使ってきたし、さまざまな場所で見聞きしたこともある。
ただ、先日ウィーンフィルに行ったときに感じたことが心にずっと残っている。
コンサートの開演前、わたしはこんな光景を目にした。
ウィーン楽友協会でのコンサートを聴きに行ったとき、きれいめな黒の上下のお洋服にブーツを履いていた女性がクロークの近くでサクッとハイヒールに履き替えてコートを預けていた姿が今も印象に残ってる。
— 吉田 佐和子 Sawako Yoshida (@sawaclarinet) December 27, 2019
ヒールに履き替えたマダムはより美しく見えたし、言うまでもなく彼女にとってウィーンフィルのコンサートが特別であることを感じた。
わたしがその光景を見たのは、コートを預けるクロークの前。
ウィーン楽友協会に入り、ホールの方へ進もうとするとチケットをチェックしてくれるスタッフがいるのだけど、そこでわたしが着ていたコートをクロークに預けるように言われた。(ちなみにクロークにコートを預けるためには少しお金がかかる)
ちなみに、パリで何度もオーケストラのコンサートに出かけているけれど、コートをクロークに預けることは必須ではない。
ウィーンでは楽友協会の他にもウィーン国立歌劇場ににも行ったけれど、同じくコートをクロークに預けるように指示された。
よくクラシックコンサートに行くときには服装がどうのこうの・・というインターネット記事を見ることがあるけれど、あぁいう記事を見る度に実際にコンサート会場に足を運んだ閲覧数稼ぎの記事なんだな、とも思う。
でも、楽友協会で感じたのは、極上の音楽にふさわしい空間だった。
コートを預け、身軽になって音楽を聴く。
極上の体験は決してオーケストラの演奏だけで作られるものではなく、演奏が始まるまでの様々な時間があってこその特別な体験。
あの空間全体が、極上の体験をすることが出来るようになっていたように感じた。
心地よい緊張感と非日常な空間があの極上の体験を連れてきてくれたような気がして、こういうのもいいな、と自然に思えた。
ちなみに、休憩中や終演後は写真を撮っている人も多く、それを止めるスタッフの方はおられなかったのだが、ホワイエや開演前にオーケストラ団員が舞台に上がったあとの写真撮影も禁じられていたことも備忘録として記しておきたい。