いわき芸術文化交流館アリオスを訪問して感じたこと

福島県いわき市にある、いわき芸術文化交流館アリオス(以下アリオス)で行われた照明講座を受講しました。

3日目の講座の様子。親切で分かりやすい説明をしてくださるスタッフの方のおかげで様々な体験が出来ました

アリオスは2008年にオープンした公立文化施設です。
名は体を表すと言いますが「〇〇ホール」「○○会館」ではなく、『文化交流館』となっていることからも、地域における役割を感じることが出来るのではないでしょうか。

アリオスは、地下2階、地上6階からなるとても大きな施設です。

大ホール(1705席)、中劇場(687席)、小劇場をはじめ、大・中リハーサル室、スタジオ4部屋、交流ロビー、レストラン、ショップ、カフェなど、様々な目的に対応出来る空間が揃っています。

アリオスは以前からずっと気になっていた施設で、多彩な自主事業や学校公演などのアウトリーチ事業を故郷の福知山でもやりたい、ぜひ一度訪れたいと思っていたのです。

アリオスの事業方針はこちら
https://iwaki-alios.jp/about/mission.html

気になる場所には、いつも何か公演がある時に合わせて行ったりもするのですが、今回は3日間に及ぶ照明講座に参加しました。

また、照明講座を受講しただけでなく副館長で支配人の長野隆人さんに館内をご紹介いただいたり、学芸員で企画制作課 音楽学芸グループ・チーフの足立優司さんともゆっくりお話する機会をいただき様々な発見がありました。

アリオスの事業は自社で展開していきたい地域に拓けた事業を行う上で大変参考になったのですが、下記の4点は福知山市の新文化ホール検討の際に参考になると感じました。

目次

1.立地場所、駐車場がない

アリオスの状況

アリオスの建っている場所は、JRいわき駅から徒歩15分。市街地に立地しています。
駐車場はなく、近隣の市庁舎用の駐車場を利用する仕組みになっています。

福知山の状況

福知山市厚生会館は市街地に立地しており、現在駐車場は会館前のみとなっています。

近くに有料駐車場などもありますが、駐車場をどうするかは新文化ホール整備においても、よく福知山市民の間でも話題になる論点です。

2.建設場所に関わる議論の推移

アリオスの状況

建設から約40年建った老朽化した市民会館を改築する話からアリオス建築の話が始まり、現在建っている場所に建てないというプランもあったそうだが、さまざまな議論を経て現在の場所に建っている。

福知山の状況

福知山市厚生会館を建て替えるとしたらどの場所がいいのか?ということについてはまだ検討委員会でも議論されていないが、現在の場所でいいのか?という話はあります。
8/23に開かれる第2回目の検討委員会以降に話題に上がるはず。

3.市役所が行う自主事業について

アリオスの状況

現在アリオスは市の直営であるが、アリオスが出来る前、市が主体となって活発な事業や学校公演などのアウトリーチ事業をしていたわけではなかった。

福知山の状況

今のアリオスからは全く考えられない話で、これを聞いてびっくり。
現在、福知山市役所が取り組んでいる文化事業は本当に限られた内容しかありません。

ですが、この話を聞いて福知山市も将来的にもっと活発な事業をやっていける可能性はあるのだと感じました。

4.財源確保の方法

音楽ホールの建設にはどうしてもまとまったお金がかかります。

アリオスの建設は、民間の資金やノウハウを活用して施設の設計、建設、そして管理運営を実施する「PFI事業」として進められており、一般的な方法で施設整備を行った場合と比較すると、設計、建設、そして15年間の維持管理コストを含めて、およそ25%(約52億円)の縮減効果がもたらされています。

詳しくはこちら
https://iwaki-alios.jp/about/summary.html

さいごに

また、いわき市は35万人の人口をほこり、福知山市の約8万人の人口と比べると人口規模は全く違うのですが、文化芸術面でいうと、下記の4点に関しては共通した課題意識を私も持っており、地方では同じような状況にある地域が多いように感じました。

❶子どもたちを対象とした学校公演の充実
❷文化芸術関係者が所属する文化協会の高年齢化による課題
❸高齢化が進む地方における福祉分野との連携
❹文化部活動の地域移行

一般的に、音楽関係者や音楽愛好家が音楽ホールを建てる場合、使用用途は音楽コンサートや音楽教室など、あくまでも文化芸術に関心がある人を対象としたものが多いんですよね。

ただ、現在自社で進めている「福知山音楽堂プロジェクト」は地域に拓けた拠点を目指していることから、公立文化施設の考え方や取り組みに共感する要素が強いのです。

私は福知山市の進める新文化ホールの検討事業に携わっていますが、今回のように様々な事例を実際に見ることで、現在進めているプロジェクトに活かせる視点が得られることが沢山あるのだと実感しました。

日本の公立文化施設の中で市の直営で運営しており自主事業をしっかり行っている施設には、また是非直接お伺いしてみたいと思います。

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この記事を書いた人

株式会社Locatell代表取締役社長 / 一般社団法人福知山芸術文化振興会 代表理事 / プロのクラリネット奏者としての活動を2023年9月で休止し、起業家として芸術文化・まちづくり・海外を軸に複数の事業を展開中

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