目を覚ましてベッドから窓の外を見たとき、そこに明るい日差しを見ると朝をしっかり認識できる。
あぁ起きる時間なのだ、朝がやってきたのだと思える。
なのに、最近朝になったのに窓の外の世界は青暗い。
青い朝の訪れは、秋の始まりを告げている。
この色に慣れてきた頃、青はもっと濃くなって、たとえば朝7時に起きても外はまだ真っ暗だったりする。
毎朝8時過ぎに家を出る夫は、冬になると真っ暗な中を出勤するのだけど、その光景を見るとまるで夜のように感じる。
パリに来て最初の秋を迎えたとき、ねずみ色の雲に覆われた日が続くにつれて、わたしの気分もどんよりと沈んでいった。
当時はなぜそんな風になってしまうのか分からず、何をする気も起きず、外に出るのも嫌になった。
原因が分からなかったので、わたし自身の精神的な弱さを嘆いていた。
それが季節性うつというものである可能性があることを知ったとき、冬は終わろうとしていた。
もしあの頃のわたしに会えるなら、焦らなくても良いのだと伝えたい。
焦ったときほど冷静な判断ができなくなるし、この世に起こるほとんどのことは、焦っても事態が好転することはない。
一年目に季節性うつを知ったわたしは、二年目の秋に教訓を活かして頑張ろうと思ったのだけど、昨年はいまいち上手くいかなかった。
今年もなんとなく上手く乗越えられる気はしないけど、秋と冬はそういう風に『頑張りたくても頑張れない時間が増えるのだ』と事前に思っていれば、いくらか気持ちも落ち着くだろう。
ちなみに、パリに住んでもう13年になる同じマンションに住む日本人のマダムは「どんよりとしたお天気が続くのには未だに慣れないし、気持ちが暗くなる」と仰っていた。
もし生まれた頃からこの環境にいれば、日照時間が短い季節にそこまで憂鬱になることもないのかもしれない、
けれど、やっぱり、日本の明るい朝が恋しくなる。
もうすぐわたしにとって最後のパリの秋がやってくる。