ルイ・ヴィトン財団で開催されたバスキア展へ行ってきました

「バスキア」という名前を聞いて思い出したのは、『左ききのエレン』という漫画でした。この漫画の中でその名前を何度か聞いたんです。

(この漫画、音楽やってる人にはむちゃくちゃおすすめなので是非一度読んでみてください。)

ただ、漫画を読んでいた時は、バスキアがどんな人物なのかということは調べることはありませんでした。

日本では今話題のZOZOの前澤社長がこちらの絵を123億で落札されたので、この絵とバスキアという名前を知っている人も多いかもしれません。

今回、バスキアの展覧会に足を運んだのは、少しでも名前を知っていて興味を持っているなら、やっぱり見に行くべきだと感じたから。

パリでは本当に数多くの展覧会が開催されていますが、とてもじゃないけど全部見に行くことは出来ません。

だったら、少しでも興味を持ったものはやっぱり行ってみるべきだと思ったんです。

今回の展示は120展もの作品が集められていました。

フォンダシオン ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団)に行くのは初めてでしたが、開放的な場所も多く素敵な建物でした。

周りは木が多く、とても澄んだ空気でした。

バスキアは1960年生まれのアメリカ人画家。
なんと27才の若さでこの世を去っているんです。

17才でグラフティーと呼ばれるトンネルや壁に描かれている落書きで有名になり、その後グラフティー制作をやめて、20才からはキャンバスに絵を書き始めます。

そこからすぐにアメリカ美術界のスターとなっていきました。

バスキアの絵には、頭蓋骨や人間の臓器がたくさん出てくるんですが、これは幼いころの事故の影響があるそうです。

事故にあって入院しているときに、母親から解剖学の本を送られたことがその後の彼の作品制作に大きな影響を与えたんだとか。

よっぽど強烈なインスピレーションを受けたんでしょうね。

また、全体を通して「黒色」が独特の存在感を持っているんですが、これは彼自身の黒人としてのアイデンティティーを象徴するものであり、黒人を差別する白人社会に対する抗議を表しているそうです。

また、バスキア自身は黒人差別と闘ったアスリート(ボクサーのモハメド・アリや野球選手のハンク・アーロン)を尊敬していたとか。

展覧会の中には、とても尊敬していたジャズミュージシャンに関連する作品もありました。

特にサックス奏者のチャーリー・パーカーは特に親近感を覚えていたとか。パーカーは正規の音楽教育を起こしていないものの、ジャズに革命を起こした存在なので、独学で絵を学んだバスキアも何か通ずるものを感じたんでしょうね。

ちなみに上記の絵でレコードに書いてある曲『Now’s The Time』はこちら。

展示されていた作品の中には、バスキアが楽しそうに創作する様子を写した写真がありました。

ただ、彼は一気に有名になり過ぎたことで日々膨大な量の創作をこなさなければならないようになり、ドラッグにはしり、27才の若さで死亡することになります。

昔は「ドラッグに手を出すなんて..」と思っていましたが、芸術家として生きる人生は常に楽しいことばかりではありません。

楽しい生き生きとした瞬間の前には、どうしても辛く生きていることが苦しくなるような時間が必ずあるのです。

そのとき、自分の力や周りの力を借りて前に進んでいくことが出来ればいいのかもしれませんが、それが難しかった人たちが止むを得ずドラッグに手を染めるように思います。

日本にいるときはあまり「アイデンティティー」についてじっくり考える機会がなかったけど、演奏会や美術展に行くことでさまざまな芸術家の作品や人生を通して自分の核となる部分をしっかり持って生きることの大切さを教えてもらっている気がします。

今日見た作品たちは、彼にしか書けないものであり、彼の人生に起こった出来事、黒人であるという変えられない事実、社会的差別、彼の感じていた使命感、そして努力して身に付けたその表現力など、それぞれがなくてはならなかったもの。

それぞれの作品が「何かを考えさせるきっかけを与えている」ということは、当たり前のようでそうではないわけです。

そしてこういう体験をすると、必ず自分にとっての〇〇は何だろう?

という考えが浮かぶんです。

私にとって変えられない事実は、日本人であり、女性であること。

私にとって表現する手段は音楽であり、さらにその中でクラシックやオリジナルなど様々な音楽ジャンルを持ってる。

でもやっぱりそれだけでは不十分で、自分の中に強い信念、揺るがないアイデンティティーがあることはすごく大事と改めて思った展覧会でした。

こういうことを考えなくても、音楽することは出来るんだけど、多くの素晴らしい芸術家たちは、いつも『自分とはなにか?』ということを自分自身に問い続けていたように思います。

そして、時に苦しみ、絶望を感じながらも、作品を創り続けていたという事実は、わたしにこれからも諦めずに創り続ける勇気を与えてくれるし、わたしはわたしなりの答えをちゃんと探し続けていきたいと思う。

今日は朝から美術館へ行ったのでタルティーヌとカフェラテで休憩しました。

パリに来た頃にタルティーヌをタルトの一種と思って注文し、バゲットを切ったものが出てきて驚いたのは良い思い出です。

最後に、全部撮ったわけではありませんが展示されていた作品を並べておきます。

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この記事を書いた人

株式会社Locatell代表取締役社長 / 一般社団法人福知山芸術文化振興会 代表理事 / プロのクラリネット奏者としての活動を2023年9月で休止し、起業家として芸術文化・まちづくり・海外を軸に複数の事業を展開中

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