フランスのコンセルヴァトワールで感じたメリット・デメリット

夫の転勤がきっかけで始まった3年間という期限付きのパリ生活。

音大を卒業してプロの演奏家として活動していたこともあり、パリで音楽を習うとしてもプライベートレッスンに通いながら学べばいいのではないかと考えていました。

また、わたしはもう30歳を超えているので、国立高等音楽院はもちろん地方音楽院でも年齢制限があって通えない学校もあるし、某大手留学斡旋サイトに問い合わせたところ、わたしの年齢で行ける音楽院は限られているとも言われ、パリの2大私立音楽院、エコール・ノルマル音楽院やスコラ・カントルム音楽院を勧められたこともありました。

ただ、フランス語の学習にのめり込むうちに『どこかのコミュニティーに所属してフランス語を使う機会を増やした方がいい』と思ったことから、いろんなご縁がつながりフランス国立セルジーポントワーズ地方音楽院で学ぶことに繋がったのです。

受験しようと思ったのは、たしか去年の5月くらいだったと思います。

ヨーロッパの音楽院は9月に始まり6月に終わるのですが、わたしは去年の10月の最初に入試があったため、9ヶ月の音楽院生活となりました。

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今回は、わたしがこの年齢で音楽院に通って感じたメリットとデメリットをまとめてみます。

コンセルヴァトワールで学んで感じたメリット

音大を卒業して以来、10年ぶりに体験する音楽院での体験は今後の人生にとてもいい影響を与えてくれました。

特にメリットとして感じたことは次の2つです。

  1. 音楽院で出会う先生方の怒らずに生徒を伸ばす指導に触れることが出来たことで、今後の指導法において重要視したいことが変わった
  2. 現代音楽のスペシャリストであるPierre Dutrieu氏に師事したことで現代音楽への興味が深まり、レパートリーもできた

音楽院によって色々と状況が違うので、わたしが知ることが出来たのはあくまでもわたしの通った音楽院の状況だけですが、日本にいるときは知らなかったことをたくさん知ることが出来ました。

またコンセルヴァトワールについては別記事でしっかりとまとめたいのですが、とにかく『相当上手い人でないとコンセルヴァトワールに入れない』と思っていたのは間違ってました。

なぜなら、音楽院にはさまざまな課程があり、子供から大人までさまざまな年齢の人が通うことが出来るからです。

入ることだけで言えば、日本の音大を出た実力があれば入れる音楽院は全然あります。

ただ、そこで相性の良い先生と出会えるのか?先生と実力を伸ばしていけるのか?というのはまた違う話ではあります。

コンセルヴァトワールで学んで感じたデメリット

パリには来年の4月まで住む予定ですが、音楽院に在籍するのは6月末まで。

このまま音楽院を続けるかどうかも迷ったのですが、下記のデメリットを感じていたことから、音楽院に籍を置くよりもプライベートでレッスンにいくことを選びました。

  1. 合奏の授業はなかなかつらい。アンサンブルが出来ない人が多い
  2. コンサートに向けてリハーサルが多い

音楽院に在籍していると必ず出席しなければいけないあアンサンブルや大編成のコンサートがありました。

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もちろんCNSM(パリ国立高等音楽院)などトップレベルの音楽院などはその音楽院に通えるレベルの人しかいないのですが、わたしの音楽院のオーケストラの授業は演奏レベル不問で取れる授業だったので、流石に超初心者はいないのですが、10代から50代くらいの人まで様々な人がいました。

日本のように一般オーケストラや吹奏楽が盛んでない代わりに、一般的に吹奏楽やオーケストラなど大編成の演奏したい人は音楽院で楽しんでおられるようです。

ただ、周りを気にせず自分のペースで演奏する人が多かったり、リハーサル回数が結構あり、時間的拘束が長かったのがつらかったです。

日本人は周りの目を気にしたり、協調性を大切にする文化がありますが、それって合奏にすごく生かされてるんだなぁとパリに来てから強く感じました。

パリに留学している子と話していると、室内楽の授業で自分とレベルの違う人と組むことになって(組む人は先生側が決めるため)大変だったという話も良く聞きます。

ただ、フランスのストラスブールの音楽院で学んでいるサックス奏者のすみかちゃんのように気の合う仲間と出会い、大々的に活動している人もいます。どんな人と出会えるのかは運だと思いますが、なるべくレベルの高い音楽院に行くことも大事だと思います。

音楽を学ぶ環境について

わたしは大阪音楽大学(私立)に通っていたこともあり、施設はかなり充実していました。

防音室もたくさんあるし、ピアノの調律が狂っているといっても酷すぎるものはそこまで多くなかったと記憶しています。

私が通っていた音楽院のピアノの調律は悪いことが多く『日本より良い環境』とは言えないなと感じましたが、やっぱり海外で音楽を学ぶということは学校の設備だけで測れるものではないですよね。

先生が教えてくださる内容、普段目にする景色の美しさ、取り組んでいる曲の作曲家の生家や、交流があった画家の作品など、あらゆる視点から学ぶことができます。

これらは本当に日本にはないものなので、ふとした瞬間にこの美しい街で音楽を学べていることを本当に幸せに感じました。

ちなみに気になる学費は?

わたしが在籍していたコースの学費は年間1200ユーロでした。1ユーロ126円で換算したとしても15万1200円。

わたしが通っていた大阪音楽大学の年間授業料は200万円だったので、それを考えるともの凄く安いですね。

それを2期に分けて払うようになっているため、パリでアルバイトをしながら学生生活を送っている人でも払いやすくなっています。

さいごに

音楽院に行って良かったかどうか?と聞かれたら、わたしは間違いなくYES!と答えます。

新しい価値観にたくさん出会えたし、フランス人の先生にフランスの作曲家の作品を教えていただける喜び、そして音楽の解釈が先生によって全然違うことも知ることが出来ました。

日本人の先生の中でもさまざまな解釈があると思いますが、フランス人の先生の中でも解釈は当然違ってきます。

最終的には自分が良いと思うものを信じたいのですが、試験などでは審査をされる先生方の価値観にあったものでないと通らなかったり、レベルの高い音楽院に入るときに必要な力、分かりやすくコネ社会なフランスでどんなことをしていくのが良いのか?など、知らなかったことをたくさん知ることが出来ました。

そして、何より自分自身の音楽を貫いて生きていくのだという大きな決断が出来ました。

留学を考えている人はぜひその想いを実現させてくださいね。

心から応援しています!

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この記事を書いた人

株式会社Locatell代表取締役社長 / 一般社団法人福知山芸術文化振興会 代表理事 / プロのクラリネット奏者としての活動を2023年9月で休止し、起業家として芸術文化・まちづくり・海外を軸に複数の事業を展開中

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