ラジオフランスで藤倉大さんの2本のクラリネットのための新作を聴く

現代音楽をフューチャーしたフェスティバルが2/7〜2/16にかけてラジオフランスで開催されていました☺️

(画像をクリックするとジョージ・ベンジャミンへのインタビューと全公演のプログラムがご覧いただけます/すべてフランス語)

このフェスティバルは2013年から毎年行われているそうなんですが、今年はジョージ・ベンジャミン(George Benjamin)の作品が大々的にフューチャーされていました。

2013年 Les musiciens de la Méditerranée
地中海のミュージシャン
2014年 Paris-Berlin
パリーベルリン
2015年 Les deux Amériques
南北アメリカ
2016年 Oggi l’Italia
今日のイタリア
2017年 現代曲をとりあげる形が復活
2018年
2019年 Kaija Anneli Saariaho(カイヤ・サーリアホ)
フィンランドの女性作曲家

わたしは全15回にわたるコンサートの中で、7番目のコンサートへ足を運びました。

お目当ては世界初演された藤倉大さんの『Twin Tweets pour deux clarinettes』

クラリネット奏者のパトリック・メッシーナ氏が演奏するということで楽しみにしていました。

リハーサルの際に録音された演奏がこちらにアップされているのですが、これは1階席で録音されているためか、少し音が直接的に届いてくるように感じられます。

わたしは上の階で聴いていたのですが、とても美しく柔らかい音色がふわっと届いて、双子(または2つ)の小鳥が鳴いている情景が鮮やかに浮かんできました。

2本のクラリネットのための素晴らしい作品の誕生に立ち会えて嬉しかったです☺️

この日のプログラムはこちら。

■George Benjamin/Sudden Time
■Julian Anderson/Litanies pour violoncelle et orchestre (ラジオ・フランスとバーミンガム市交響楽団の委嘱、世界初演)
■Dai Fujikura/Twin Tweets pour deux clarinettes (世界初演)
■Pierre Boulez/Figures – Doubles – Prismes

このプログラムはどういう意図があってつくられたのか?ということを探っていたのですが、この2つのことが意識出来ると思います。

  1. ジョージ・ベンジャミンとピエール・ブーレーズのつながり(IRCAM(イルカム):フランス国立音響音楽研究所)
  2. ロンドンの現代作曲家たち

音源がYouTubeにあるものはビデオをリンクしておくので、ぜひ実際に聴いてみてください。

■George Benjamin/Sudden Time


ジョージ・ベンジャミン(60歳)

英国の作曲家・指揮者・ピアニスト・大学教授。1960年、ロンドン生まれ。早熟の神童として知られ、1970年代後半にパリ音楽院に留学、オリヴィエ・メシアンの愛弟子として評判になる。後にピエール・ブーレーズに認められ、IRCAMと協力体制を築き上げた。「ピアノ・ソナタ」は自作自演でレコーディングし、ピアノの相当な腕前も披露している。
1980年代から厖大な量の委嘱作品をこなし、管弦楽曲のほか、アンサンブルと電子楽器のための作品も作曲した。 帰国後にケンブリッジ大学キングス・カレッジで音楽を専攻し、アレクサンダー・ゲールに師事。若い頃から作曲家として有名になる。
現在はロンドンに住んでおり、定期的にロンドン・シンフォニエッタを指揮している。
王立音楽大学で教壇に立つかたわら、現在はキングス・カレッジ・ロンドンでも教鞭を執る。1990年代よりたびたび来日して自作の上演に立ち会うかたわら、都内の大学でワークショップを開いてきた。2003年には武満徹作曲賞の審査員も務めている。弟子に藤倉大さんがいらっしゃる。

ベンジャミンの作品は出身地であるイギリス音楽よりも、ベルリオーズ、ラヴェル、メシアンなどフランス音楽の伝統の流れを汲んでいるそうで、武満徹の作風にも似ていて分かりやすいのが特徴だそう。

■Julian Anderson/Litanies pour violoncelle et orchestre (ラジオ・フランスとバーミンガム市交響楽団の委嘱、世界初演)

チェロを独奏された方は暗譜して臨んでおられました👀

ジュリアン・アンダーソン(53歳)
ジュリアン・アンダーソンは英国のメジャー・オケから引く手あまたの作曲家。
フィルハーモニア管弦楽団が運営する「Music of Today」で多くの現代音楽を紹介する他、ウィグモアホールのコンポーザー・イン・レジデンスを務めるなど様々な取り組みを行ってきた。
ギルドホール音楽院の作曲家教授、コンポーザー・イン・レジデンスをつとめており、過去にはバーミンガム市交響楽団の同ポジション、フィルハーモニア管弦楽団のコンサート・シリーズ「Music of Today」のアーティスティック・ディレクターなどを務めた実績を持つ。現在イギリスで最も注目を集めている作曲家の1人。

Dai Fujikura/Twin Tweets pour deux clarinettes (世界初演)

藤倉大(42歳)は、日本の現代音楽の作曲家。
1977年、大阪生まれ。1993年、15歳で単身イギリスに渡りドーヴァーの高校を出たあと、トリニティ・カレッジ・オブ・ミュージックでダリル・ランズウィックに師事。
イギリスのハダースフィールド国際音楽祭で作品が初演、のちロンドン・シンフォニエッタによりロンドン初演。2000年に修士課程をロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックでエドウィン・ロックスバラに師事。2003年1月から博士課程をキングス・カレッジ・ロンドンでジョージ・ベンジャミンに師事し学位取得。2009年3月以降は、イギリスのロンドン在住である。
2006年、BBCのプロムスでBBC委嘱の「クラッシング・ツィスター」がBBCコンサート・オーケストラ、チャールズ・ヘイズルウッド指揮によって初演。
2010年2月、ドキュメンタリー番組「情熱大陸」で特集された。

2012年にNMCレーベルより作品集CD《Secret Forest》リリース。2017年には東京芸術劇場にて開催されたボンクリ・フェスのアーティスティック・ディレクターに就任。現在は全作品が「リコルディ・ベルリン」から出版および貸与されている。

■Pierre Boulez/Figures – Doubles – Prismes

ピエール・ブーレーズが39歳、44歳の作品。
ブーレーズは、フランスの作曲家および指揮者。パリ国立高等音楽院でアンドレ・ヴォラブールとオリヴィエ・メシアンに対位法や作曲を師事するが中退し、ルネ・レイボヴィッツ(レボヴィツ、レボヴィス)にセリアリスムを学ぶ。作曲の弟子にはバーゼルの音楽大学で教えたハインツ・ホリガーがいる。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会でその初期から活躍し注目される。シュトックハウゼンと共鳴するが、ノーノとは鋭く対立している。
初期にはヴェーベルンの極小セリー形式から出発。シェーンベルクの音楽に対しては次第に批判的となる。
また、後にはドビュッシーやストラヴィンスキーの再評価に務めた。詩人では最初にルネ・シャールを取り上げるが、後にはステファヌ・マラルメによる作品を書き、指揮活動としても徐々に前の時代の作曲家へと遡って評価する姿勢が見られる。
フランス国立音響音楽研究所IRCAMの創立者で初代所長(退任後は名誉総裁となる)。
2015年、生誕90年を記念してドイツ・グラモフォンがブーレーズが指揮した自作を含む音源をまとめた44枚組のCDを発売。2016年1月5日、バーデン=バーデンの自宅で死去。90歳で死去。死因は明らかにされていない。

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さいごに

この日はなんと終演後にフランス国立管弦楽団のクラリネットパートの方々とお話する機会があり、この日のコンサートのちょっとした裏話も聞くことが出来ました。

この音楽の祭典は毎年行われているけれど、ことしはジョージ・ベンジャミンが関わっていることで例年よりも素晴らしい内容になっていると仰っていた方もおられました。

ちなみに、藤倉さんの作品は最近大ヒットした映画「蜜蜂と遠雷」のために書かれた「春と修羅」の音楽でご存知の方も多いかもしれません。

この「春と修羅」を聴いて、こういう美しく繊細な情景を音にできる日本人の作曲家って本当に少ないのだなぁと改めて感じました。

また、このサウンドはジャズピアニストの伊藤志宏さんのオリジナルとどこか似ている気がします。

藤倉さんのこちらの作品もとても魅力的で思わず最後まで一気に聴いてしまったので、是非。

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この記事を書いた人

株式会社Locatell代表取締役社長 / 一般社団法人福知山芸術文化振興会 代表理事 / プロのクラリネット奏者としての活動を2023年9月で休止し、起業家として芸術文化・まちづくり・海外を軸に複数の事業を展開中

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