モネとセザンヌが教えてくれたこと

パリ生活のカウントダウンをしながらブログを書いていると、まるでどこかへ旅行へ行ったときのように予定を詰め込もうとしてしまう。

もう2度とパリへ来ることはないだろう、とは思わないけど、しばらくは来ない気がするから。

ヨーロッパ旅行もしばらくなくてもいい。むしろ日本の自然や温泉を楽しめる旅館に泊まりたい。今はそんな気分だ。

パリにはたくさんの美術館があるので、出来れば日本へ帰国する前に1週間に1.2回はどこかへ足を運ぼうと決め、昨日はマルモッタン・モネ美術館へ行ってきた。

先月の27日からセザンヌ展が始まったのだけど、気を抜いて行ったら切符を買うための列で30分ほど待たなければならなかった。

小雨が降っていたけれど、そこは“パリジャンのように”ダウンコートのフードを被りながら並んだ。

パリの人たちは少しくらいの雨なら、傘をささずにフードをかぶる。理由は分からないけれど、思わず真似したくなる。

パリに住んでいる人と、そうでいない人はまず服装で分かる。この場所に住み始めた当時、わたしは自分の服装が浮いているように感じて仕方なかった。

シンプルな服装が似合うパリの人たちを見て、わたしもあんな風に服を着こなしたい、と強く思いGAPでシンプルなTシャツを買ったのは良い思い出だし、そのTシャツは秋を迎える前に着なくなってしまったのも良い思い出だ。

アジア人であるわたしとヨーロッパ人の骨格や肌の色、髪の色はもちろん全く違うのだから、いくら同じものを着ても、わたしが憧れるようなパリジャンにはなれないのだ。とそこでようやく気がついた。

また、パリは残念ながら日本よりも治安が悪く、メトロでは常にスリに気をつけている。いつもわたしは斜めがけのバックを持ってるのだけど、パリでは斜めではなく、前にカバンを持ってきて使っている。

カバンが後ろにある状態で使うと危険だからだ。

旅行で北欧へ行ったときは何の心配もなくカバンを本来の使い方である斜めにかけて使うことが出来て、治安の良さにホッとしたのを覚えている。

パリにはたくさんの若いプロのスリ集団がいるので、見た目だけでは分からないことも多い。脅すつもりはないけれど、日本から旅行で来る人は本当にスリに気をつけてほしい。

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マルモッタン・モネ美術館には、実は今回初めて訪れた。美術館自体は狭くないと思うのだけど、たくさんあるそれぞれ部屋の大きさはそんなに広くなかったからか何となく狭く感じた。

美術館の中はかなり人が多くてゆっくり見るには少し厳しい環境だったのだけど、有名な絵だけではなくセザンヌの様々な時代の作品を見ることが出来た。

やっぱり素晴らしい作品を一つ鑑賞するのも良いけど、前後の出来事など時間の流れーストーリーを感じられるとより惹きつけられる。

セザンヌは様々な作品を真似て描いていた。

良いと思うものを実際に描いてみると新たな発見がたくさんある。そこで発見したものは彼の新しい表現につながったんだろうな、と思った。

一番印象に残ったのはサント・ヴィクトワール山を描いた作品だった。

帰りに図録を買って帰ろうかと思ったのだけど、内容がギュッと詰まったこちらの本を買うことにした。

今回展覧会に来て、フランス語の長文に対して以前よりも苦手意識がなくなっている自分がいた。おそらくDELFの長文読解の問題を解くためにたくさん文章を読んでいるからだと思う。

ただ、オーディオガイドはきっと分からないだろう、と思い借りなかった。「読む・書く・聞く・話す」の4技能のうち、わたしは一番聞くのが苦手だからだ。

そこはこれからもフランス語の勉強を続けてちゃんと理解できるようになりたい。

セザンヌが様々な視点から対象物を見て創り上げた静物画がもっと見たかったので、また別の場所へ出かけてみようと思う。

地下にはたくさんのモネの作品があった。

“印象派”という流派名の由来となったモネの代表作『印象・日の出』

その中でも、晩年の彼が目の病気を患ってからの絵は何か独特のオーラを感じた。

死んだあとにものこる作品というのは、大量生産されたものではなく、こんな風に力が込められたものなんだと思う。

セザンヌもモネもどんなに苦しい状況でも描くことを諦めず、自分の信じた世界を表現しようとしている。

わたしが展覧会に訪れたほとんどの芸術家もそうだけど、彼らは絶望の淵にいても描いている。描き続けている。

そして、誰かから求められるものを描くのではなく、自分だけの表現を極めようとしている。

昔、パリでは「サロン」と呼ばれる国が認める展覧会に入賞しなければ画家としての道を目指すのは厳しかった時代がある。でも、何度もサロンに落選しても描き続け、今有名になっている画家たちが沢山いる。

私たちが彼らの作品を見ることが出来るのは、彼らが諦めずに描き続けたからだろう。

周りに止められても、信念を貫いたからだろう。

魂のこもった作品、演奏を死ぬまでにどれだけ創ることが出来るのか?

モネの晩年の作品に囲まれながら、そんな問いが浮かんできた。


ー完全帰国まで、あと27日ー

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この記事を書いた人

株式会社Locatell代表取締役社長 / 一般社団法人福知山芸術文化振興会 代表理事 / プロのクラリネット奏者としての活動を2023年9月で休止し、起業家として芸術文化・まちづくり・海外を軸に複数の事業を展開中

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