2018年もあとわずかとなりました。
2年目のパリ生活を季節ごとにざっくり振り返ってみたいと思います。
春
全然体調がすぐれない日が続き、約2ヶ月くらい家にいる生活をしていたときは本気でコンサートを開催したりするのはもう難しいと思ったし、ベッドの上にいてもお金が稼げるようにならないとやばいんじゃないかと思いました。
楽器を吹くって思った以上にエネルギーが必要だし、楽器を吹くという今まで当たり前だったことが出来なくなって、どうにかしなきゃという気持ちが強かったです。語学学校にいくのをやめてから1人黙々と勉強しているうちに、いくら座学を頑張っても実戦で咄嗟に言われた言葉に反応できない自分に気づき、やっぱり何らかのコミュニティーに属していた方がいいし、それなら音楽系の学校に行きたいと思いコンセルヴァトワールに行くことをを決めました。
夏
忘れられないのが夏のニースでの講習会。フランス国立管弦楽団首席奏者のパトリック・メッシーナ氏のレッスンを受講しました。感じたことはすべてこの記事に書いていますが、この夏の体験がなければ今の「わたし」ではなかったはず。同じタイミングでGoogleの検索順位に変動があり、このブログのPVがガクッと下がりました。
そこでまたアクセスが増える為にブログを頑張るよりも、わたしの音楽を磨く方が大事だと思い、ここからウェブでの発信はかなり縮小していきました。
ニースでの1週間が正にそうだったんですが、正直音楽に真剣になっていたら外に発信する余裕なんてないんです。音楽的な衝撃と、ブログへの衝撃が同時期に来たのはすごくタイミングも良くて『今は音楽に集中しなさい』と言われているようでした。
秋
コンセルヴァトワールの受験が10月上旬にあり、試験の1ヶ月前くらいからは何とも言えない精神状態になりました。以前大学を受験したのは高校3年生の18才の時なのでもう10年以上前だし、その時の感覚を覚えていないのですが、こんなにきつかったっけ…?という感じでした。受験について詳しくはこの記事に書いています。
結果的に志望していたコースよりも1つ上のコースに入ることが出来、2019年6月には卒業予定です。10月に入学し、11月にはさっそくコンサートもありバタバタと日々が過ぎて行きました。
冬
冬ってまだまだ始まったばかりだと思うんですが、12月はロンドンでレコーディングとシューティングのお仕事がありました。本当に素晴らしい人たちとお仕事が出来て嬉しかったです。
また、この時期「わたしもあの人のようになりたい」と思える人たちに立て続けに合うことが出来ました。クラリネットを習っている2人の先生はもちろんですが、この現場で出会ったソフィー、グスターボ、まなみさん、そして久しぶりにパリで再会したドイツ在住のオーボエ奏者・藤井さんの素敵なお人柄が忘れられません。
心に残っている言葉
今年クラリネットの先生に言われた2つの言葉はわたしをとても支えてくれました。
一つはパトリック・メッシーナに言われた『方法ではなく思考を変えなさい』という言葉。このシンプルな言葉はわたしの演奏だけでなく、生き方も根本的に見直す必要があると改めて実感しました。練習をしている時の思考や、何かを決断する時の思考で何かと「方法」を重視していることに気づいてしまったのです。
もちろん、これは恥ずかしいことでもあります。どんな態度で音楽と向き合っているのか、普段の考え方、大切にしているもの..音楽には思考の全て行動となって現れます。何もかも見透かされているんだと思った一言でしたし、この言葉を秋に言われてから、何度も思い出しながら過ごしました。まだまだ完璧に変われているわけではありませんが、時間をかけても変えていきたい部分です。
もう一つは、ピエール・デュトリューに言われた言葉。
『どんなときも「わたしはいつも進んでいる」と心で唱えて。練習していて「わたしは本当にうまくなってるのかな?」って不安になる必要はない。いつもこの言葉を思い出して。僕は君が望む結果を手に入れることができると信じているよ』と言ってくれました。
習っている先生から励ましの言葉をかけてもらえることでこんなに嬉しい気持ちになるとは知りませんでした。
ずっと心に留めていた2つの言葉以外にも、今年最後にパトリックがこんな言葉も送ってくれました。
今年最後に先生が仰ったのは『オープンマインドで、知的で、上達したいと言う強い意欲を持つことは、音楽家として本当に大切なことだよ』という言葉だった。もちろん尊敬する先生はその全てを兼ね備えてる。その言葉を心に留めて来年も頑張っていこうと思います。
— 吉田 佐和子 Sawako Yoshida (@sawaclarinet) 2018年12月30日
日本にいた頃は、今振り返っても褒められた記憶よりも厳しい言葉を言われることの方が多かったように思います。
パトリックやピエールだけでなく、他のコンセルヴァトワールの先生方も怒って指導するようなことはありません。問題点があったときも、なるべくプラスの言葉を使って指導されていて、演奏者でありながら教育者としても優れていると感じています。
わたしは中学の吹奏楽部で楽器を始めましたが、怒って指導される先生方もたくさんいらっしゃいました。それが普通の環境で育つと、その教育で育った人たちも怒るようになっちゃうんでしょうね。今年は、パリで出会ったすばらしい演奏家であり教育者でもあるみなさんのようになりたいと思った年でもありました。
来年のこと
来年成し遂げたいことや特に大きな目標はありません。
でも、来年の上半期は毎月何らかのコンサートがあるし、目の前のことをひとつずつ丁寧に取り組みながら、音楽家としてのアイデンティティーを改めて考え続けていきたいです。
また、4月12日(金)にはパリで初めてのコンサートを開催します。パリの人たちにわたしの音楽がどのように感じていただけるのか、今からすごくワクワクしています。
また、音楽ができるのも健康な体があってこそ。健康に気を使いながら来年も音楽とともに歩んでいきたいと思います。